パテックフィリップやオーデマピゲなどの雲上ブランドは、「手が届く人が購入するラグジュアリー」といった立ち位置だと思います。
もちろんそういったブランド戦略は「アリ」で、特別感や所有者の優越感に一役買ってくれるでしょう。実際、ラグジュアリーブランドの代表格・グッチの創業者は「値段が高ければ高いほど所有する価値は高くなる」といった名言を残しています。
一方でタグホイヤーは多くの顧客の手に届けられる高級品を目指しています。そう、タグホイヤーのブランド戦略の大きな特徴は、顧客ターゲットが非常に幅広いのです。
企業は自社製品時計コピーを売ろうとする時、まずターゲットを絞ります。
多くの高級ブランドが「富裕層」「社会的地位が高い方」をターゲットとする中で、タグホイヤーは若い世代~年配者までと幅広くとることによって、まず差別化しています。
これは、LVMHの中でもウブロやルイヴィトンとは明らかに異なるターゲティングです。
また、価格とステータス性の二軸でとったポジショニングマップ(自社と他社の市場での位置づけを明瞭化したもの)をご覧いただくと、タグホイヤーが同業他社と比べて独特の位置づけをしていることが見てとれるかと思います。
タグホイヤーポジショニング
まだ社会人になったばかりの若い世代でも「ステータスある高級時計がほしい」というマインドがあることを理解し、10万円台で購入できる安い価格帯の商品を用意する。これは競合他社にはない強みです。一方である程度の年齢になったのでハイエンドラインが欲しい、という方に対して50万円~70万円の価格帯のモデルを用意するなど、様々なニーズに応えられる幅広い商品構成を行っているのです。
実はこのターゲットを若い世代に広げる・他社と異なるポジションをとる、というのはラグジュアリーブランドにとってはもろ刃の剣で、一歩間違えると「安っぽい」「迷走してる」などと言われてしまうことも。
とりわけタグホイヤーはスイスの老舗企業なため、あまりにもチープな時計を出してしまうとブランド全体のイメージが下がります。
そうならなかったのは、後述する二つの秘密に関係があるのではないか、と考察します。
タグホイヤー安さの秘密②お値段以上の品質を実現できる生産ラインの確立
前述のように、タグホイヤーは決して安っぽいといったイメージはなく、むしろ時計としての品質も高級感も競合他社とそん色ありません。
その秘密は、お値段以上の価値を提供できる生産ラインを確立しているためではないでしょうか。
つまり、低価格なのに、その価格を大きく上回る高品質な時計の生産体制が存在するのです。
現在は一線を退いてはいるものの、LVMHの時計部門およびタグホイヤーのCEOを務め、現在のタグホイヤーの立ち位置に大きな功績を残したジャンクロード・ビバー氏は、実際に「販売価格の数倍の価値を与える」と明言してきました。
ビバー氏はタグホイヤーが歴史的に高い時計製造技術と、効率良い生産ラインを持っていたことに目をつけ、その強みをそのままブランド戦略に活かしました。
タグホイヤーはなぜ安い ブランド戦略
言うまでもなく、良いものを安く作るためには生産ラインがしっかりしていなくてはなりません。
しかしながら時計製造において、コストを削減するのは結構難しいのです。
と言うのも、時計は固定費比率が高い業界です。
設備費、人件費、開発費が他業界と比べ大きく、コストを下げるためには商品回転率を上げてその固定費を分散させる必要があるのですが、それもなかなか難しい、といったブランドは少なくありません。
なぜなら時計業界、特にスイス老舗は「職人の手作業」が重視される世界。ブランドによっては人件費が非常に大きなものになります。職人が手作業で作って一か月で一本しか製造できなければ、その人件費はその一本の価格に転嫁しなければなりません。
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